保育は国と自治体の責任で〜本当に大丈夫!? 公立保育所民営化〜

 2012年4月、入部保育所が民営化され、公立保育所はあと11カ所となりました。
 福岡市は「公立保育所は7ヵ園を存続させ、その他については、すべての子育て家庭に対する支 援の拡充に人材と財源を振り向けるため、順次民営化を進める」としています。

これからの民営化予定

 

既に民営化された園

 

Q1 公立保育所の民営化とは?

政府・厚生労働省と規制改革・民間開放推進会議から出されています

 国による三位一体改革による地方財政の切りつめが原因です。特に保育行政に関わっては2004年に公立保育所の予算が一般財源化されたこと(2003年度までは保育所費として限定されて自治体に予算がおりて来ていた)、2005年の施設整備交付金が私立向けに限定され、公立施設には適用されなくなったことに原因があります。政府や厚生労働省が考える保育改革の中身はまず、認可保育所に営利企業の参入を認め、どんな分野も競争に任せればいいというものです。

具体的には
① 社会福祉法人に限定されていた認可保育所の設置認可に関する規制をなくし、営利企業の参入を認める。
  (2000年3月通知)
② 公立保育所の廃止、民営化を推進し、公立と民間が同等の立場で競争できる条件整備を進めていきます。
ア)指定管理者制度の活用
イ)市場化テスト(官民競争入札制度)・・・官と民とを対等な立場で競争させ、『民でできることは民で』を
  具体化させていく仕組み
③ ①と②で公立保育所の民営化を進めながら、公的な保育制度以外の認可保育施設を活用することで
  待機児童対策などの保育ニーズに対応する。若干の公的補助を出して待機児童ゼロの数字合わせをするもの 。

最近の規制改革・民間開放推進会議・第三次答申(06年12月25日)の具体的施策
① 認定こども園の活用促進
② 認可保育所における利用者と保育所の直接契約の導入
③ 利用者に対する直接補助方式の導入

 

Q2 福岡市の財政は逼迫(ひっぱく)しているので民営化は仕方がないの?

 ある市の民営化の理由は「公立保育所の運営は市税等を使っており『最小の経費で最大の効果を上げる』ことも行政の責務の一つと考えています。

 保護者や将来を担う子ども達への経済的負担を減らすことも大切なことです。」といった説明がされています。

1 何故、財政がパンクした理由を公立保育所にもってくるの?
箱モノや、住民の生活とはかけ離れたものに使われたお金の見直しをすることが大切です。
福岡市はどうでしょう? 2、保育園運営の財源はどこから出ているの?

2 保育運営の財源はどこから出ているの?

保護者からの保育料(4割)
国からの補助金(3割)
(地方交付税)
市町村の財源(3割)

3 公立保育所の保育士の給料が高いのでは?
 小学校の教師(勤続10年)が手当等を入れると月額35~40万円ですから、公立保育所の保育士はその7割程度(37歳平均で30万円)となっています。 私立保育園では正規職員の多くは4~5年の勤続年数で、非正規職員の雇用も多く、保育方法の継承が難しく、いい保育を作っていくことが難しい状況です。 公立保育園が民営化したからと言って、そこで働いている保育士はまたどこかの公務職場に行くことになり、私立保育園の賃金ペースに変わっていくわけではありませんから財政の改善にはつながりません。

4 公立保育園の国負担分が2005年度から削減
 その分は地方交付税(国が集めた税金が自治体に配分される財源で、自治体の判断でどの分野でも使える税収)でフォローしていると国は言いますが全体の額は削減されています。 私立保育園には確実に運営費(使い道が特定された財源)が国から入ることになり、自治体としては公立保育園よりも私立の方がお得なのです。
 国は民営化の誘導を財政面からも行っている。

Q3 民営化をめぐって全国ではどんな動きがおこり、どんな運動があるのでしょうか?

 民営化は子どもの育ちや保護者の暮らしを大切にすることよりも、国の構造改革の方針ありきで理由は後で付けているのが実態です。
 民間委託された保育園の保育士が次々に辞めていくという混乱が起こっているところも少なくありません。
 民営化の大きな問題点は保育の質が低下していくということです。コスト削減はベテラン保育士が少なくなり、非正規雇用の保育士が増えていくことにつながります。
 チームワークが壊れ、ベテランが少なくなることで親への支援が難しくなり、保育士と保護者との連携・共同が困難になります。

 自治体の基本の役割は「住民の福祉の増進を図ることを基本」(地方自治法)ですが、保育所の民営化は放棄するという方向を示しています。

 「お上が決めたことだから従わなくてはいけない」と思っていた保護者の方々で「子どものことでは譲れない」という思いで、全国各地で保護者・保育者・市民が連携し、立ち上がっています。

違法とされた民営化

① 2006年4月20日 大阪府大東市、上三箇保育所の廃止・民営化に関する訴訟 保護者への損害賠償を命じる判決が出る

② 5月22日 横浜市内の公立保育所4園の民営化に関する訴訟 請求自体は却下されたが民営化は違法という判決 「特定の保育所で保育を受ける権利は法的に保護されている。」
(保育を受ける権利を特定の保育所の選択権を含めて認めた。)

 

延期・中止の自治体も

2009年1月13日 民営化延長  大阪府堺市

2009年4月  民営化が予定されていたが、「関係者との協議の場」が不十分とされ見送られ6月議会でも提案されず民営化は提案されず2009年4月からの民営化は不可能になる。

 

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