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国民の生命と財産を守る上で心配なのが、国土交通行政の弱体化だ。「公務員酷書」は、ツアーバス事故や豪雨などの自然災害に対し、国民を守るための行政が機能しているとは言えない状況だと指摘。「体制拡充が切実になっている」と訴えている。
●事後チェック機能せず
〈運輸関係〉 バス、トラック、タクシーの分野では1980年代以降に規制緩和が進められ、事業者数が激増した。国は「事前チェック型」から「事後チェック型」に転換するのだと主張し、違反があれば取り締まるから大丈夫と言ってきた。
ところが、法令違反を監査する職員は全国に365人(2016年)しかいないため、事後チェック行政は事実上機能していないと指摘される。実際、関越自動車道での高速ツアーバス事故(12年)や、長野県軽井沢町でのスキーバス事故(16年)など重大事故が相次いでいる。
酷書は「監査要員の大幅不足」という状況の早急な是正が必要と訴えている。
〈航空関係〉 国土交通省成長戦略(2010年)は国際競争力の強化を打ち出し、
(1)徹底的なオープンスカイ(航空運送の自由化)
(2)国内外の格安航空会社(LCC)の参入促進――などを行ってきた。その結果、過去6年間で航空交通量は18%増加。今後も東京五輪・パラリンピック開催や訪日外国人旅行客の増加が見込まれている。
一方で、航空職場では人員削減が続き、航空管制官はこの10年で7%削減された。しかも大量の「欠員」が生じており、負担は増すばかりだという。航空機に指示を出す管制業務には複数の目で確認する「ダブルウォッチ体制」が求められるが、現在はその体制が取れない。
さすがに最近は従来の2倍以上の管制官を採用し始めた。とはいえ、「管制官として自立して業務ができるようになるためには1年半~3年半という訓練期間を要し、すぐには要員不足を解消できない。大量の訓練生を抱える職場では教育が追い付かず、人員が少ないなか業務負担が増加している」と指摘されている。新人の育成もままならない状態だ。
●出先機関ほど人員減に
〈公共事業関係〉 大地震や豪雨、火山噴火などによる自然災害が各地で起きている。地方整備局の事務所や出張所の職員は、決壊した河川堤防や通行不能な道路を復旧し、崩れた土砂を除去するなどの緊急活動にも従事している。被災自治体に対しても復旧工事や災害査定を行う職員を派遣している。
こうした職員が過去10年で4千人以上減らされている。人員削減は特に地方の出先にしわ寄せされ、欠員を意味する「空きポスト」が全国に600あるという。
酷書は「災害対応をはじめとする安全・安心を守るための業務に支障が生じ、地域への責任を全うできない状況が急速に広がっている」と指摘している。
〈気象関係〉 災害に備えるためには、気象行政の拡充が欠かせない。定員は現在5169人であり、ピーク時にくらべ1420人の純減となっている。人員だけでなく、気象通報所の廃止や、測候所の原則的廃止、空港出張所の民間委託化などで職場は縮小し続けている。当局は機械化による監視体制が進んだためと説明しているが、酷書は「異常時の即時的な対応が極めて困難になっている。特別警報や市町村ごとの注意報などきめ細かい情報発表も求められるようになり、職員の努力だけで対応しているが、心身ともに不調をきたす者が増えている」と指摘し、定員増が不可欠と強調している。(連合通信 2017)