保育は国と自治体の責任で 〜いま、子どもの育ちがあぶない〜

 「子ども・子育て新システム」の作業部会が7月6日に開かれ、事務局が示した中間取りまとめ案が了承されました。新制度は国と自治体が保育を実施する義務を負う公的保育制度は解体される制度になっています。

 現行公的保育制度には3つの特徴があります。
①保育が必要な子どもは全国どこでも保育を受ける権利があり、国と自治体は保育を実施する責任がある。
(その責任に基づいて保育所の建設や、条件整備をします。)
②子ども達の受ける保育は一定水準(国の定める最低基準)以上の保育である。
③一定以上(国が定める最低基準)の保育水準を確保するための保育所を運営する費用は国と自治体が保障する。

最低基準で定められている保育所の基準(抜粋)

①職員 保育士  
     0歳児       3 : 1
    1~2歳児     6 : 1
    3歳児      20 : 1
    4~5歳児   30 : 1
嘱託医、調理員は必須
(調理業務の全委託の場合は調理員を置かないことができる)

②設備
    2歳児未満  乳児室    1,65㎡/人
   (0,1歳児)  ほふく室   3,3㎡/人
           医務室、調理室、便所の設置

    2歳児以上 保育室または遊戯室 1,98㎡/人
   (2~5歳児)屋外遊戯室(保育所以外公園等で代替可) 3,3㎡/人
調理室、便所の設置

保育 Q&A

Q1 パートでも利用できるって本当?

A 現在でも入ることができます。 現在、パートの方、求職中の方、産前産後の方も入所できます。
入ることができないのは、保育所の数が絶対数が足りでいないからです。
国・自治体は現行制度では保育の実施義務があるので、待機児童がいれば保育所を建設し、対応をしなければなりません。
しかし、現在では財政難や少子化を理由に保育所建設をしぶっています。

 

Q2 新制度で待機児童の問題は解消するの?

A 待機児童の解消にはなりません。
新制度になれば、市町村には保育の実施責任がありません。したがって待機児童数のカウントの必要はなくなります。保育所に入ることができないのは親(個人)の責任ということになります。待機児童が解消するまで現行通りに「市町村のあっせんを認める」としていますが、「あっせん」とは、市町村が施設の紹介と施設に入れてくれるように依頼するのみで強制力はありません。 また、現在の待機児童は0歳1歳が主ですが、0歳1歳児は総合施設への入所の義務付けがされていません。総合施設は3歳以上児の教育と保育となっています。

 

Q3 入所の仕組みはどうなるの?

A 1、市町村から「必要量」についての認定を受ける。フルタイムの人は「長時間」、パートの人は「短時間」という具合。専業主婦の場合は「標準時間」
  2、希望する施設と契約を結ぶことで入所が決定する。望む施設に空きがなければ自分で他の施設を探す。

 

Q4 「応諾義務をかせる」と言っていますが、どういうことですか?

A 入所を断ったらいけないということです。障がいを持っている子どもや低所得の家庭が直接契約になると排除されかねないということで施設側に「正当な理由がない限り断ることはできない」ようにしています。
「正当な理由」があいまいです。職員がいないことや、定数入っていること、保育方針に合わない事など正当な理由に挙げられています。

 

Q5 利用料(保育料)はいくらでしょうか?

A 利用料は、地域や施設の規模、利用時間に応じて決まります。 施設には教材費や制服代、独自の教育活動費、施設整備費等の上乗せをして良いとなっています。今の保育料よりも高くなることが予想されます。

 

Q6 民営化されるとどんな団体が参入?

A 「保育の質を保つために客観的な基準を満たしていることを要件に
1)認可外施設を含めて参入を認め、
2)株式会社、NPO等、多様な事業主体の参入を認め、これにより保育の量的拡大を図るとともに利用者がニーズに応じて施設や事業者を選ぶことができる」としています。
今は社会福祉法人しか保育所を開所できません。この基準をなくし、ある一定の基準を持っていれば、営利企業でも、社会福祉法人でも保育所の運営ができるということです。
「保育」は儲かる分野だから、企業が多く参入するだろう、施設が増えるだろうことを政府は見込んでいます。

 

Q7 総合施設とは何ですか?

A 幼稚園が担う教育と、保育所の役割である保育を併せて提供する幼保一体化 施設です。
「満3歳以上児の受入れを義務付け、標準的な教育時間の学校教育をすべての子どもに保障。また、学校教育の保障にくわえ、保護者の就労時間に応じて保育を必要とする子どもには保育を保障。
満3歳未満児(0~2歳児)については保護者の就労の時間等に応じ、保育を必要とする子どもに保育を保障。」となっていますが、0~2歳児については受け入れを義務付けていません。

 

≪ 公立保育所 民営化について ≫
2011年4月1日付で以下の3ヵ園が民営化をされました。城の原保育園(社会福祉法人清心会)、大井保育所(社会福祉法人大井会)、壱岐保育園(社会福祉法人桂信会) 福岡市立保育所は21か所から現在では12カ所へと減少しまいた。 公立保育所が存在するのは、児童福祉法で自治体に保育の実施責任があるからです。公立保育所がなくなるということは、保育の実施責任から後退していると言わざるを得ません。


資料 【子ども・子育て新システムに関する中間とりまとめ(案)】(PDF)

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